外科療法

内科的治療に効果が見られない場合、激症で命に関わる場合などは外科療法が用いられます。基本的には大腸を全て摘出し、Jパウチ(小腸をJの形に折り曲げて大腸の代役にする)を増設する手法が取られています。これにより人工肛門になることを回避できます。

外科療法を調べて真っ先に不安になることは、大腸をとっても生活できるのかということでしょう。多くの人の場合、排便回数は術後は頻回となるものの、時間の経過とともに一日に5〜9回程度に落ち着いてくると言われています。この回数も起床後、朝食後、昼食後、夕方、夕食後、入浴後、就寝前といった具合となり、小を済ませるのと同様の感覚で行えるようで、生活に大きな支障をきたすことはないようです。小に行くのと同時に済ませてしまうという人が多いようです。

しかし一般的に大腸を全て摘出するので根治すると言われていますが、人によっては術後のトラブルが多発する人もいますので、外科療法を望む場合は十分検討してください。

外科手術適用の判断

厚生省特定疾患「難治性炎症性腸管障害」調査研究班により潰瘍性大腸炎の手術適応が示されており、絶対的適用と相対的適用の2種類があります。

絶対的適応:生命の危険があり、手術以外の方法では治療が困難な場合
・全身状態の急性増悪
・重篤な急性合併症:大腸穿孔・急性腹膜炎、中毒性巨大結腸症、大量出血
・大腸癌

相対的適応:内科的な治療が困難な場合
・難治例で入退院を繰り返しQOL(生活の質)が著しく損なわれている
・ステロイドによる重篤な副作用のでるおそれがある
・大腸外合併症:皮膚疾患や成長障害(小児)を合併して内科治療が困難
・大腸合併症:狭窄、瘻孔、潰瘍、炎症性ポリープ、異型上皮など

術式

術式はいくつかありますが、どれを適用するかは病院(主治医)の治療方針によって決まるようです。希望の術式がある場合は、その術式でオペを行っている病院に行くのが得策です。

回腸嚢肛門管吻合術:IACA(Ilea j-pouch-Anal Canal Anastomosis)
大腸を全て摘出し、回腸(小腸の最終部分)でJパウチ(直腸の代役を果たす嚢)を作り、肛門に繋ぐ手術です。直腸の粘膜を数ミリから数センチ残すので漏便の可能性が減り、排便機能もIAAと比べると良好と言われています。しかし、僅かながら残した直腸粘膜が炎症を起こしたり、癌化する可能性があります。

回腸嚢肛門吻合術:IAA(Ileal j-pouch-Anal Anastomosis)
大腸を全て摘出し、回腸(小腸の最終部分)でJパウチ(直腸の代役を果たす嚢)を作り、肛門に繋ぐ手術です。IACAと同様の方式ですが、IAAでは直腸の粘膜も残さずに切り取ります。これにより、再燃や癌化の可能性は無くなります。しかし、IACAと比較して漏便の確率は増すようです。

回腸直腸吻合術:IRA(ileo-rectal anastomosis)
昔行われていた術式ですが、現在は限られた場合にしか行われていません。この術式では直腸を温存します。そのため、通常パウチは作りません。これは、直腸の炎症が比較的軽く、学童期のように早く学校へ戻したいというような時に行われる術式です。この術式は、長期間に何回も再燃を繰り返す危険性が残ります。

 

メリット・デメリット

外科手術を望む際、「大腸を取ればトイレの回数は増えるがそれ以外は万事解決」と考えてしまう方が多いようです。確かにそうなのですが、かなり難易度の高い手術のため、手術結果によっては術後思うような排便ができない場合も少なくありません。また術後特有の症状が発生するとかなり厄介です。

デメリットがあることを自覚した上で手術に望みましょう。また手術は熟練した医師がいる病院でうけることをオススメします。

メリット
・薬から離脱できる:大腸を全てとるので基本的に内科治療で服用していた薬は飲む必要がなくなります
・食事制限がなくなる:基本的に何でも食べられるようになります
・排便がコントロールできるようになる:便の回数は一般の人よりも増えますが、我慢できるようになります

デメリット
・1日の便の回数が永久的に複数回となる:水様便や軟便しか出なくなり、1日に5〜10回程度トイレにいく必要があります。ただし慣れれば不自由と感じることがなくなってきます。
・便が漏れることがる:就寝中を始め、何かの拍子に漏れてしまうことがあります。術後時間がたつにつれて漏れる回数は減るようです。慣れるまでパットが欠かせません。
・上手く排便できないことがある:回腸と肛門の接続部分が細くなってしまい、強制的に広げないと思うように便が出てこない場合があります。
・術後のトラブルを起こすことがある:腸閉塞や回腸嚢炎等などを起こすことがあります。回腸嚢炎が酷くなると人工肛門となることがあります。

術後のトラブル

イレウス(腸閉塞)
麻酔の影響で腸管の動作が鈍くなり起こす場合と、手術の影響により腸と腹壁の組織が癒着して起こす場合があります。通常は絶食により1〜2週間程度で解決しますが、良くならない場合は管を挿入して吸引したり、回復手術を行う場合もあります。
症状は腹痛、吐き気、嘔吐があります。非常に痛く、動くのも困難になります。この場合はすぐに病院に行き、診察をしてもらいましょう。たいていの場合、レントゲンをとるとイレウスかどうか分かります。
イレウス気味の場合は食事を控え、使い捨てカイロ等で暖めることで腸の動きが活発になり改善する場合もあります。

回腸嚢炎
かいちょうのうえんと読みます。パウチ炎といったりもします。呼んで字のごとく回腸(Jパウチを作った部分の小腸の呼び名)のフクロ(嚢)が炎症を起こします。症状は肛門の奥や尾てい骨周辺が痛い、立っていると痛みで辛いといったものです。
軽度の炎症であればフラジールという抗生物質を服用することで治療可能です。フラジール経口薬の効果が薄い場合はフラジール膣錠を使うとより有効的です。フラジールは膣内に繁殖したトリコモナスという原虫を殺虫する薬ですが、潰瘍性大腸炎にも効果があるという報告があったことから利用されるようになりました。薬が効くメカニズムは不明です。
また一時的に痛みを抑制するために、痛み止めを服用します。ロキソニンが一般的ですが、痛みが強い場合はボルタレンという座薬を用いることもあります。しかしこれは対処療法で根本的な治療ではありません。また、痛み止めを長期間に渡り服用すると胃の粘膜が荒れるので注意が必要です。
重症になるとこのフラジールの効果は全くありません。プレドニンやペンタサにより炎症を抑える方法や、入院して絶食を行い、炎症が治まるのを待つという治療法をとります。それでも良くならない場合は再度一時的にストーマを再建します。一時的にストーマを再建すると、その快適さから閉じずにずっとそのままで生活を送る人もいます。